読売新聞より 連載「官業」を問う                           2001/11/1

小泉内閣が掲げる構造改革は地方自治体にも及ぼうとしている。小泉改革の焦点の
一つ、特殊法人改革は、自治体でも公社、第三セクターといった外郭団体のあり方に
住民が厳しい目を向けるきっかけとなっている。本県や県内自治体の外郭団体の現状
や抱える課題を点検する。 


収益性に感覚のずれ

県住宅供給公社
 「民間業者なら売れ残りを出せば命取り。公社には利益を出そうという感覚がない。あとで値下げするなんて公社は一言も言わなかった」 
 横浜市旭区の「若葉台団地」に住むHさん(40)は怒りが収まらない。一九七九年に入居が始まった総戸数六千三百戸の巨大団地。Hさんが3LDKの一室を約五千百万円で購入し、入居したのは九五年八月。その同じマンションのうち売れ残った百十一戸を、県住宅供給公社が一昨年七月、分譲時より平均約四割値下げして売り出したためだ。 

 公社のやり方に反発したHさんら九十五世帯は昨年三月、自分たちの購入価格と値
下げ後の価格の差額(総額十億六千万円)を支払うよう求め、横浜地裁に提訴した。 

 公社の笹井俊克常務理事は「バブル崩壊があり、民間マンションの相場が大きく下がったので適切な価格に改めて再販売した」と説明するが、今も約六十戸が売れ残ったまま。若葉台団地も含め、公社全体の売れ残り物件は九月末現在、九十九戸。その維持・管理や固定資産税の支払いなどで年間計約一億円の経費がかかっている。 

   ■  □ 

 「公社は表向き、剰余金を計上する健全経営だが、過去の遺産で帳じりを合わせているだけだ」。十月一日の県議会一般質問。星野剛士氏(自民)は公社にかみついた。 

 公社が九九年度に取り崩した引当金は、若葉台団地の販売不振の影響もあり九十六億円。昨年度も四十四億三千六百万円を取り崩した。将来の損失などに備え積み立てるのが引当金とはいえ、取り崩しが恒常化すれば、経営は実質的に赤字体質と言わざるをえない。 

 このほか、県が今年二月に公表した外部監査には〈1〉事業収益の減少〈2〉賃貸住宅の家賃滞納額の増加〈3〉地価下落による事業用地の含み損の増大――などの問題点が列挙された。 

   ■  □ 

 公社が金融機関から受けた融資が焦げつくなどし、金融機関に損失が出た場合、県
は金融機関に損失補償することになる。その枠は昨年度末で七百十億五千五百万円。公社の経営が最終的に県民の税金によって担保されている以上、一層の経営効率化は不可避だ。 

 公社は今年四月から、販売態勢強化のため、住宅開発、販売両部門を統合した。来
年度からは民間の企業会計とほぼ同じ会計方式に改め、財務内容の透明化を図る。 

 昨年度以降の新規分譲物件については売れ残りが出ていないが、さらに職員削減、業務の効率化、スリム化が急務となっている。