2001/11/12
原告側準備書面(第10回口頭弁論から)

平成12年(ワ)第1157号 損害賠償請求事件

           準 備 書 面 10


平成13年9月7日

横浜地方裁判所第五民事部合議係 御中
 



第1 被告準備書面(9)の計算部分に関する反論

 被告準備書面(9)における,原告の数字の主張に関する反論について,次の通り反論および数字の根拠を明らかにする.

 なお,原告の主張した数字は,ごく一部の記載のミス,計算違いがあったが,それ以外は根拠とするデータの取り方に起因してそのわずかな違いが原因となって,若干の数字の違いが生じているところはあるものの,いずれも有効数字を考慮した誤差の範囲内と言うべき数値の違いであり,被告の主張を取り入れて計算し直しても原告主張の本質に影響するものではないことを明らかにする.

 なお,法的な主張に関しては別途主張,反論を行う.

1 被告主張(1)について

 公示価格の年別変動率は被告の指摘するとおり東京圏の住宅地についての数字である

 

2 被告主張(3)について

@ 原告ら準備書面7の別表3の物件は,鑑定対象物件と同一のものがないため,専有面積の広いものから,狭いもの,間取りタイプの違うものまで3−11棟における6つのタイプを選択し,それぞれに譲渡価格から土地,建物価格を計算したものであるが,ほぼ土地価格は49.0万から49.1万の範囲に収まっている.

 この結果を見ると,面積,間取りにかかわらず同じ階の物件については,ほぼ土地持ち分の平米単価は同一であり専有面積,間取りその他の条件が違っていると比較できないと言う被告の主張自体,誤りであり,この平均値をもって比較対照とすることは極めて合理的である.

A 同計算による建物価格に建物部分に対する消費税が含まれることは認める

B 別表3について、「販売価額の土地価額分は、1平方メートルあたり49.0万円であ」ると表現したのは、別表3に記載した住戸タイプ6種の平均値である。

 したがって、「公示価格から推定される(適正と考えられる)土地価額分は1平方メートルあたり54.8万円であ」るとの表現も同様、6住戸の平均値である。

 次に、「土地持分(m)」、「m単価(万円)」の算出方法を示す。土地持分は、敷地面積を各住戸の専有面積の比率で配分したものである.

土地持分 = 敷地面積 × 当該住戸の専有面積 / 合計専有面積

により計算した。ここで、第16期(3−11棟)の敷地面積と合計専有面積は、それぞれ、3678.65m、は9537.99mである。また、「m単価(万円)」は、被告の推定の通り、譲渡価額中の土地価額を土地持分で除したものである。すなわち、

単価 = 譲渡価格中の土地価格 / 土地持分

により計算した。その結果は、49.01から49.06である。また、平均値は49.03となり、上述の通り、この値をもって、「販売価額の土地価額分は、1平方メートルあたり49.0万円であ」ると表現した。なお、この計算によれば、被告指摘の住戸番号3−11−706は49.04であり、小数第2位を四捨五入すると49.0となり、計算間違いまたは五捨六入の事実はない。

 基本的には,原告は,この試算において数字の有効桁数をせいぜい3桁と考えて,4桁目を四捨五入している.

 被告は登記簿の持ち分割合で計算して誤りであると主張するが,登記簿における持ち分割合は,上記の専有面積割合とは厳密には一致していないが,どちらの数字を使うかは,考え方の相違であるが,被告の主張する登記簿の持ち分割合を用いて計算しても被告主張の通り49.0万から49.06万であり,実質的な違いをもたらすことはない.

C まず、「34.9万円」の算出方法を示す。これは被告の推定の通りであり、別表2記載の「m単価(万円)」の「土地」欄の3つの数値の平均値である。なお、この値は34.87であり四捨五入し、34.9とした。なお、34.86との被告の計算は、計算間違いと思われるが,いずれにしても4桁目を四捨五入すれば相違はない.

 次に、「54.8万円」の算出も概ね被告推定の通りである。すなわち、上記34.9と別表1の平成4年の「H11を100とした場合」の157.0パーセントを倍数に引き直した1.57との積であり、54.79を小数第2位で四捨五入し、54.8としている。

 なお、被告は、「次に述べるとおり、別表2は誤っており、全く信用できないものであって、同表中の『34.9万円』という数値も誤りで、それを基礎とする計算は必然的に誤りである」と主張するが、これ以降で別表2中の値の計算過程を明らかにしていくので、これに対する認否を明確にされたい。

D

(@)別表2に記載された物件が,平成7年に譲渡され,再販売のための鑑定が平成11年度価格で行われていることは,本件訴訟で特に争いのない事実であり,それを表にまとめることは,特段の誤解や混乱を招くとは考えられない.

 もっともお互いの混乱を防ぐために,今後主張において価格に言及する場合,その基準年度を可能な限り明らかにすることはやぶさかではない.

(A) 「29.49」の算出過程を示す。まず、被告は、「若葉台4−30棟、同4−31棟及び同4−32棟全体の敷地の面積は9069.81平方メートルであり、これに別表2記載の3住戸の敷地権の割合各10万分の324を掛け合わせると、それぞれ29.38平方メートルになり、別表2記載の『29.49』にはならない。」と主張するが、原告は登記上の持ち分ではなく,全体の敷地面積に個別の専有面積と全体の専有面積の割合を計算しているのである.

 これによると、3住戸の土地持分は、

土地持分= 敷地面積 × 当該住戸の専有面積 / 合計専有面積

= 9069.81 × 79.13 / 24335.18

= 29.49

となる。この式中、土地持分割合(専有面積比率)に相当する値は、乙8、9、19、20に記載された分譲募集パンフレットに記載の当該住戸の専有面積と全住戸の合計専有面積との比、すなわち、

79.13 / 24335.18 = 325.2/10万

となる。この数値を採用したのは(1)で議論した第16期(3−11棟)の場合と整合をとるためである。なお、被告が推測した、「3住戸の敷地権の割合各10万分の324」とは、原告が専有面積として用いた値(所謂、壁芯計算)を登記専有面積(所謂、内壁計算)に置き換えたに過ぎない。ちなみに、この場合、敷地権の割合は当該住戸の登記専有面積と合計登記専有面積との比、

74.36 / 22920.77 = 324.4/10万

となり、土地持分は、

土地持分= 敷地面積 × 敷地権の割合

= 9069.81 × 324/10万

= 29.39

となる。

 なお、被告は、「若葉台4−30棟、同4−31棟及び同4−32棟全体の敷地の面積は9069.81平方メートルであり、これに別表2記載の3住戸の敷地権の割合各10万分の324を掛け合わせると、それぞれ29.38平方メートルになり、別表2記載の『29.49』にはならない。」と主張するが、登記の持ち分割合324/10万で計算すると29.38であり,内法の正確な数字では29.3861となり4桁目を四捨五入すると29.39となる。

いずれにしても,登記簿の割合による29.38万から,壁芯の専有面積割合による29.49万の間には,原告が主張している法的判断に影響を与える差異はないと言うべきであり,どちらかが論理的に間違っているとも言えるものでもなく,原告としてはどちらかの計算方法で統一すればよいと考える.(ちなみに,損害額は,被告主張の計算方法の方がやや大きくなる)

(B) 別表2中の数値は、(A)で示した過程により算出した「29.49」の数値を使って算出されている。数値の意味を正しく理解すれば表の信用性には何ら問題ない。仮に29.49を被告主張の29.38(前述のように29.39が正しいと思われる)に変更しても,逆に損害額がやや大きくなるだけで,大勢に影響はない。

(C) 「譲渡価額(万円)」は、被告の指摘通り、4−32棟入居年の平成7年の価額として記載している。

 被告が準備書面9第1(3)Aで、「消費税から建物価額を求めようとするときは、「建物価額分=消費税×1.03÷0.03」となり、「土地価額分=譲渡総額−建物価額分」と主張していることは認める。ただし、ここでいう『建物価額分』には、消費税額を含む」と認めた通り、消費税は建物価額分に含まれている。

 誤解を招かないように記載するなら,消費税は建物価格の内に含まれているので建物価格の括弧書きとするべきであった.

 4−32−604、4−30−504の譲渡価額、については、被告指摘の通り、末尾の千円の単位の記載間違えであった。その結果土地価格が若干変わることとなる.
(32−604 誤5635.0 正5635.3)
(30−
504 5519. 5519.

 4−31−803(18期3次)の物件は平成7年当時は未発売であった。しかしながら、被告が平成12年8月23日付準備書面第五 二 1で、「被告は、その後、若葉台団地一八期分譲共同住宅一九四戸(以下、「一八期」という)の販売を検討した。しかし、一七期の分譲住宅について、買替え(自宅を売却し、その売却代金を資金として住宅を新たに購入すること)の不成立を理由とする解約が発生する等し、状況が変わったため、被告は、一八期の購入申込受付を延期した」と事実経過を述べていることからも明らかなように、被告は、当初、4−31棟についても17期(4−32棟)とほぼ同時期の販売、入居を考えていた。

 原告は、鑑定対象住戸の販売当時の譲渡価額と鑑定評価価額との比較から損害額を算定しているが,31−803については,譲渡価格が存在しないため,4−32−604および4−30−504の鑑定価格と平成7年度販売価格の対比から値下がり率を計算し,その計算結果の平均値と31−803の鑑定価格から逆算した値を4−31−803の推定譲渡価額として別表2中に記載したものである。

 したがって、仮に被告指摘のように、4−31−803の数値は推計値であるので適正価格からの乖離倍率の計算から除外するとしても,原告の主張する倍率は次の通りほとんど変動しない.(論理的には全く同じになるはずであるが,表の数字を使うと,四捨五入による計算桁数の関係で若干細かい数字が変わる)

 以下計算式と,修正値を示す.(末尾別表2と別表2改の倍率の項目も従前計算を正確を期すため土地価格を有効数字4桁で計算している以外は同じである)

イ) 適正価格との乖離倍率=土地の平成7年譲渡価格平均 ÷ 土地の平成11年鑑定価格平均 ÷ 1.2(平成7年と11年の価格補正)

ロ) 原告の従前の計算

 (31−803の推計値を加えた3つのデータによる適正価格との乖離倍率)

(109.2+111.0+112.9)/3÷(34.2+34.9+35.5)/3÷1.2=2.6538 

 

ハ)        推計値の31−803を除き,土地持ち分割合を被告主張とし,譲渡価格の記載誤りを修正した計算(32−604と30−504の2つのデータによる適正価格との乖離倍率)

(109.7+111.4)/2÷(34.38+35.02)/2÷1.2=

2.65479

  以上のように,被告主張を取り入れて計算した方が若干倍率が高くなるが,いずれも有効数字3桁目を四捨五入すると2.7倍となる.

(E) 「鑑定評価額(万円)」欄の数値は、小林鑑定士の鑑定結果(乙10ないし12)と志賀鑑定士の鑑定結果(乙13)の単純平均値であり、「誠に杜撰な数値である」との認識は鑑定結果を基に値下げ販売額を決定した当事者の認識とは思えない。以下に算出過程を示す。

 小林鑑定士の鑑定結果は、乙10ないし12に鑑定評価額(土地価格+建物価格)およびその内訳として土地価格と建物価格とが明確に記載されている。なお、乙10ないし12によれば、評価額の内訳である土地価格と建物価格は鑑定評価額を積算価格の比で按分することにより決定している。これらを表1に示す。

 

表1.横浜総合コンサルティング 小林千秋氏による鑑定結果

部屋

番号

タイプ

1棟全体の積算価格(百万円)

割合(%)

鑑定額(万円)

 

 

建物

土地

建物

土地

建物

土地

30-504

F2

2220

1080

3300

0.673

0.327

2180

1060

3240

31-803

G'

1680

805

2485

0.676

0.324

2240

1080

3320

32-604

G

2400

1090

3490

0.688

0.312

2230

1010

3240

 

 志賀鑑定士の鑑定結果は乙13に鑑定評価額のみ記載されている。ただし、乙13の別紙1に土地価格、建物価格、積算価格が記載されているので、小林鑑定士の鑑定手法に準じ、これらの値の比により鑑定評価額を土地価格と建物価格に按分した。これらを表2に示す。

  

表2.横浜綜合鑑定事務所 志賀善典氏による鑑定結果

部屋

番号

タイプ

1棟全体の積算価格(百万円)

割合(%)

鑑定額(万円)

 

 

建物

土地

建物

土地

建物

土地

30-504

F2

2220

1101

3321

0.668

0.332

2012

998

3010

31-803

G'

1790

838

2628

0.681

0.319

2159

1011

3170

32-604

G

2200

1111

3311

0.664

0.336

2000

1010

3010

 

 表3に両鑑定士による鑑定結果の平均値を示す。同表中には平成11年に値下げ販売された時の販売価格も示す。表からも明らかな通り、値下げ販売額は両鑑定士の鑑定結果の単純平均である。

 

表3.両鑑定士による鑑定結果の平均値と値下げ販売額

部屋

番号

タイプ

鑑定額(万円)

販売額

 

 

建物

土地

(万円)

30-504

F2

2096

1029

3125

3125

31-803

G'

2200

1045

3245

3245

32-604

G

2115

1010

3125

3125

 

 被告が準備書面9第1(3)Aで、「消費税から建物価額を求めようとするときは、「建物価額分=消費税×1.03÷0.03」となり、「土地価額分=譲渡総額−建物価額分」と主張している点は認める。

 ただし、ここでいう『建物価額分』には、消費税額を含む」と認めた通り、消費税は建物価額分に含まれており、消費税率が何パーセントであろうと無関係である。

 なお、被告は値下げ販売の際、譲渡価額表(乙19、20)には消費税を含めた譲渡価額しか掲載しておらず、実際の消費税額は不明である。正確な議論のためにも被告は値下げ販売時の譲渡価格における消費税額を明らかにされたい。

(F) これまで(E)で述べた通り、原告の計算と被告の計算の違いは,土地持ち分の計算を登記簿記載の持ち分割合で行うか,実際の専有面積の比率で行うかの違いだけであり,しかもどちらを用いても計算結果は有効数字3桁目の違いにすぎず,本質的な違いは生じない.

(G) これまで(A)ないし(F)で述べた通り、原告の主張は、4−32−604、4−30−504の譲渡価額、および、その値から導出される土地価額(の千円の位の数字)についてのみ記載間違えがあった以外は、被告指摘のような誤りの事実はない。さらに、記載間違えを被告指摘の通り修正しても、有効数字の関係で損害額を含め他の数値には全く影響しない。

 また、4−31−803については(C)で述べた通りである。

 

(4) 被告主張(4)について

 これまで(3)Dで述べた通り、原告の主張と計算結果には、被告指摘のような誤りの事実はない。

 次に、「41.9万円」の算出方法を示す。概ね被告推定の通りであるが、「別表2中、4−30−504の物件の鑑定評価額の『m単価(万円)』の数値『34.9万円』に1.20を乗じて求めたもの」ではなく、別表2記載の「m単価(万円)」の「土地」欄の3つの数値の平均値34.87を四捨五入した34.9と1.20との積である。この34.9万円という数値については(3)C、Dに述べた通り何ら問題はない。

 

(5) 被告主張(5)@について

 4−31−803については、これまで(3)D(C)で述べた通りである。

 いずれにしても,被告が主張している数値的な問題は,基本となる数値を相互に確認さえすればすむ問題,あるいは被告が原告が推計している数値が実際と違うというのであれば,被告が正しいデータを公開すれば,相互に共通の数字を基礎として議論ができる問題であり,しかも被告の主張に立っても結果としての数字は原告の従前の主張とほとんど変動がないことは明らかである.

 

(6) 被告が指摘した点を反映させた被害額算出結果

 なお,念のためにこれまで被告より指摘を受けた点を全て被告主張に立ったとして、原告の主張による被害額を新たに算出した結果を別表2改に示す。

 別表2は、これまでの原告の主張による計算結果である。両表とも損害額の算出に計算間違えがあったので、あわせて訂正する。

 

変更箇所は、

@     土地持分:(3)(A)、(B)参照

A     譲渡金額総額:(3)(C)参照

B         4−31−803の譲渡価額とm単価および損害額:(3)(C)参照

C            損害額の算出結果

である。

 2つの表からわかる最も重要なことは、被告の指摘による計算手法を用いても、原告の被害額の算定結果において大勢は変わらない。むしろ、被害額はやや拡大することになる。

 原告の主張した土地の適正価格と,平成7年当時の販売価格の乖離倍率も約2.7倍で変わらないので,原告の法的な主張の前提たる数字は変わることがない.

以上




平成12年(ワ)第1157号 損害賠償請求事件

           準 備 書 面 11

平成13年10月16日
横浜地方裁判所
第5 民事部合議係 御中


被告準備書面(9)23頁記載の平成7年物件譲渡価格の主張は、あたかもバス利用の物件だけを抽出したかのごとくであるが、例えば交通条件をとっても、駅から至近のマンション(例えばグレーシア二俣川は相鉄線二俣川駅前に建築された駅前再開発ビルで、下層部に大規模ショッピングセンターを含む複合ビルで、駅とはペデストリアンデッキで結ばれており、徒歩2分にすぎない)まで含まれており、類似の条件を比較したものとは考えられない。
そこで、被告の引用する物件について、以下の点を明らかにされたい。
1、所在地 2、販売会社名 3、敷地面積 4、分譲戸数 5、当初販売価格で完売されたか
6、販売過程における値下げ販売の有無 7、新築・中古の別 8、最寄鉄道駅 9、そこからの交通手段 10、同距離 11、同所用時間 12、街路条件 13、住戸別の販売条件

                                  以上


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