2000/11/01
原告側準備書面(第4回口頭弁論から)


平成一二年(ワ)第一一五七号損害賠償請求事件

準 備 書 面

平成一二年一一月一日
横浜地方裁判所  第五民事部合議係 御中


第一 はじめに

 本準備書面において原告らが被告との間で本件契約を締結した経緯について主張を行う。

第二 本件売買契約締結の経緯

 一 一七期 (三二棟)を購入した原告らと被告との間の売買契約の経緯

 1 被告は、原告らを含む購入予定者に対し、売買契約締結前の勧誘時、「譲波価格設定に関する規定上、公社は、分譲住宅の値下げ販売ができないし、値引き販売もしない。」等の説明をはじめ以下の説明を行ってきた。

(一) 一八期は割高であるとの説明を行い、一七期の売買契約を締させた。具体的な被告の説明の方法は以下の通りである。

 @ 一七期発売開始前の相談会(販売センター)が行われていた頃、被告の女性職員に「一八期は南向きの分だけ、一七期よりも約五〇〇万円ほど高くなるので、今回限度額目一杯ローンを組む人は、一入期購入は難しいので、一七期の方がよい。」との説明がなされた。

申し込み、抽選会以降も被告担者から同様の説明がなされた。

 A 「一入期は南向きなどの環境で五○○万円は高くなり、買えなくなります。」との説明がなされ、一七期購入に潜み切った者もいる。

 B 三〇、三一棟の物件を希望したが、被告販売センター窓口職員に「南向きは五〇〇万位高くなる。」との説明がなされた。

C 販売センターにおいて被告担者(男性)から「三二棟より三○棟の方が南向きなので五〇〇万程度高くなる。」との説明がなされた。

 D 「三〇棟・三一棟は真南を向いているので、三二棟より五〇〇万は高くなる。」との説明がなされた。

 E 南向きの間取りがよく、三〇棟のことを聞いたが、「三二棟よりは数百万円上乗せの価格にて販売する。」との説明が被告担者よりなされ、あきらめて三二棟を購入した者もいる。

 F 三〇棟購入希望であったため、そちらの販売計画などを販売センターで相談したが、「三二棟よりは一〇%程度高い価格設定を予定している。」との説明を受けた。

 G 平成七年四月頃、「できれば南向きで環状四号線からも遠い三〇棟を買いたい。」というこちらの希望に対し、「三〇棟は競争率も上がるし、三二棟より高い値付けをする可能性が高いとの説明を受けた。

H「三〇二二一棟販売価格は、三二棟より必ず高くなります。」との説明を受けた。I 購入前、「三〇棟は南向きだから同じ間取りでも高くなりますよ。」との説明を受けた。

J 「三一棟の方が良いと思う。」と言ったら「もっと販売価格が高くなるでしょう。」と言われた。

K 売買契約前、気持ちに迷いがある時に「今後後発物件の価格が上がる可能性がある。」との説明を受け、購入を決断した。

(二) 値下げ不可能との説明を行い、一七期の売買契約を締結させた。具体的な被告の説明の方法は、以下の通りである。

@ 平成六年七月頃、被告担当者と竜話で話した際、値下げの可能性について尋ねたところ、「値下げはない」との説明を受けた。

A 購入にあたっての確認の電話のやりとりの中で被告担当者が「値下げはない。」と明言した。

B 被告担当者に 「原価を下げれば?」と聞いたが「それはできない」との説明を受けた。

C 被告担当者に対し、「もう少し安くならないか?」と聞いたところ、「民間とは違うから、値下げはしない。」との説明を受けた。

D 契約後キャンセル急増で不安になり、何度も被告に電話したが「値下げはしないので安心して購入してほしい」と説得された。

E 「少し値引きしてもらえないか」と聞いたとき、被告販売担当部長餌取正一氏(以下「餌取氏」という。)から「会社の物件は値引き販売をしないから、値崩れは絶対にないので、将来買い換えの時にも有利である。」との説得を受けた。

F 買替不調でキャンセルが続出していたことから、値下げの可能性について確認した。当時の被告販売担当二名から、「被告販売物件の値下げ販売はできない。(社内ルールで一度決定された価格を変えることはできない)」との回答を受けた。

G 平成七年六月二九日、被告担当者久保田氏より電話が入った際、「もっと安くできないのですか? そのようにすれば友達の中でも購入したい人がいますよ。」と質問したところ、「安くして売るということはありません。」と久保田氏は回答した。そこで、確認の意味も込めて「これから先も値を下げるということはないのですね?」と尋ねると「そのようなことは一切できません。」と断定的な回答を得た。

H 「当物件は、今後いかなる事が起きようとも、値下げは一切しない。」と断定的に説明を受けた。購入価格端数の値引きを要請すると、「値引きはできない。今後購入される第三者に対しても、一切値引きは行われない。」との説明を受けた。

I 「今後値下げ販売する予定はないのか?」と質問した際、被告担当者は「若葉台の分譲価格は、若葉台全体の計画の上で決定されたもので、ある時期を値引きすると、全体の価格も値引き返却しなければならなくなるので、値下げすることは絶対にできない。」との説明を受けた。

J 契約前の説明時に「民間マンションが値下げしているのに、なぜ被告は下げないのか?」との質問に対して、被告販売センター係員が「長期的計画で開発設計、建築販売しているので、値下げ販売は絶対にありえない」との回答した。

K 三二棟購入に際し、餅取氏に「今後三〇、三一棟を販売する際に三二棟より安く販売することはないか」と尋ねたところ、「三〇、三一、三二棟は同じ時期に土地を購入し、造成や建築も同じ業者がやっているので、今後値上げして販売することはあるにしても、値下げすることは絶対にあり得ないので安心して下さい。」と回答された。

L 「マンション価格が下がりつつあるが、値下げはしないのか?」と質問すると被告担当者は、「若葉台全体への影響もあり、値下げは全く考えていない。被告は被告全体で採算をとるという考えはできず、各々の住宅販売で採算をとるので、値下げをすると赤字を生み出すことになり、値下げはありえない。」と回答した。

また、「今後三〇棟、三一棟販売で値下げすることはあるか?」と質問したところ、「三〇与三二棟まで敷地を区分所有するため、後発を値下げすることはありえない。被告の四〇年以上の実績を見て下さい、値下げの経験はありません。」と明確な回答を受けた。

(三) 会社法・原価主義を論拠とした値下げ不可能との説明を行い、一七期の売買契約を締結させた。具体的な被告の説明の方法は、以下の通りである。

@ 購入前、「被告は、法律により値下げはできません。」との説明を受けた。

A一七期の積立分譲を解約するとき、一年半の積立期間に社会情勢が変化したので、確実に分譲価格が下がると思っていた。しかし、餅取氏や契約担当者が「虫社は原価主義で価格を決めているので、虫社法があり、販売価格は絶対に下げられない。」と言われた。その時初めて、会社は民間と違って価格を下げられない、と教えられた。「原価主義」は、被告の常套句であった。

B 「被告は原価主義をとっているので、時期を待っていても値下げすることはない。」との説明を受けた。

C 三〇棟販売後、餅取氏と話したとき、「風景も売っています。また方角、高さにより値段が違う。原価に基づき、これらの諸条件により価格を決めている。」との説明を受けた。

D 購入のキャンセルが出ているとのことで被告に確認したところ、担当者が「価格は原価主義(原価の積上げ)で算出されているので、南向きの三〇、三一棟は同一条件の三二棟より五〇〇万高く、価格は絶対変更されないので三二棟を買った方が得である。」との説明を受けた。

また、「もし値下げ等がある場合は、既購入者にも補填を行い、購入条件は三〇・三一・三二棟は必ず同じである。」と説明を受けた。

E 販売センターにおいて「会社さんの若葉台物件は大規模開発で環境も良好だが、民間の物件よりも割高であり、なぜもっと安く(民間と同程度に)できないのか?」との質問に対し、被告担当者は「割高と思うが、建設費用等から算出した価格であり、妥当と考えている。」との回答をした。

(四) 三〇・三一・三二棟は同一条件で販売するとの説明を行い、一七期の売買契約を締結させた。具体的な被告の説明の方法は、以下の通りである。

@ 「三棟は将来にわたって同一条件で販売する。」との説明を受けた。

A 購入前、販売センターにて第一七期と第一八期に販売時期を分けることで価格差が出ないか質問したところ、被告担当者から「同一条件である」ということで、安心して購入を決意した。

B 当時は周辺がどんどん値下がりしている時期で、「一八期も値下がりするのであれば一七期をキャンセルして一八期に申し込みたい」と言ったら、「一入期は値下げしません。一七期と同じ条件で売り出します」との説明を受けた。

C 販売担当者や餅取氏は、「三〇・三一・三二棟は同一条件で販売する。一七期購入者に不利が生ずることはないので安心して購入してほしい」と説明をした。

D 平成六年秋頃、被告販売担当者に「我々の入居後、一八期が値下げされることはないか?」と尋ねると、「当初の価格での販売は難しくなってきた。現在値下げする方向である。決定次第、連絡します。」との回答を得たが、一カ月経っても連絡がないので、再度電話をすると別の担当者が出て、「誰がそんなこと(値下げ)を言ったのですか?民間圧迫になるので、それはできないのです。ただ何らかの対応を検討中です。とにかく一七・一入期は必ず同一条件で販売するので、安心して下さい。今後販売条件が変更されれば、さかのばって対応します。先に買った方が損をすることは、絶対にありませんから安心して下さい。」との説明を受けた。

E 平成七年七月、諸手続きの際に被告販売センターにいた女性社員に対し、「周辺価格が低下しているのだから、価格設定を見直すべきなのでは?」と質問したところ、「公社は値下げできないし、値下げしない。三棟同一条件で販売してゆくので、安心して入居してほしい。」との説明を受け、本件物件を購入するに至った。

F 本契約直前、一七期に割高感を感じ、他物件の検討を行っていた。販売センターヘ電話して契約(入居)予定戸数を確認したところ、全戸数の約半分だとの説明を受け、販売センターヘ出向いた。そこで、本契約に向け「割高感」「入居者が少ない」ゆえ、不安で迷っている旨、餅取氏と長時間にわたり話をした。

 その際、「この物件は高いのでは?」と質問すると、餅取氏は、「高くなってしまいました。」と回答した。そこで、「このままで完売するのですか?」と質問したところ、「正直言って難しいと思っています。」との回答を得た。そこで、「値下げはしないのですか?」と質問したところ、「今のところは予定していません。何しろ会社のトップは頭が囲いですから。(私は民間から来たと明言)」との回答を得た。そして、「もし値下げ等、条件が変わったらどうするのですか。」と質問すると、「当然、三棟同一条件で販売することを予定していますので変わった場合は、同一条件に致します。ですから安心してご契約下さい。」と説得された。

(五) 値下がりした場合には返金する(又は値下がりした場合には対応する)との説明を行い、一七期の売買契約を締結させた。具体的な被告の説明の方法は、以下の通りである。

@ 販売センターで被告担当者から「値下がりした場合は、差額は返金する」との説明を受けた。そのような事例が過去にあったのかと質問したところ、「過去にあった」との回答があった。

A 契約直前に再度値下げの可能性について確認したところ、「値下げするとしたら、何らかの対応はする」との説明を受けた。

B 「すぐ値下げするのでは?」の問いに対し被告担当者は、「値下げ時には同じ条件で行う。」との回答をした。

2 被告は、平成七年六月六日及び七日に開催された「中庫手続き&後払い制度説明会」において、原告らを含む購入予定者に対し、以下の説明を行った。

(一) 平成七年六月六日は、一七期の一階〜七階の購入予定者を対象とした説明会が開催された。その際の被告担当者の説明の内容は、次の通りである

@ 「後払い制度採用のお知らせ」なる資料の説明を受け、それに対する質疑応答の中で「値下げをすることはないのか?」という質問があった。それに対し、餅取氏より、「被告は原価主義を標榜しており、また民間圧迫にもなるので値下げ販売はしない、出来ない。だから安心して購入してほしい。」との説明がなされた。

そもそも原価主義なる単語は、法律専門家でもなく一般庶民である原告らにとって通常使用する範囲になく、被告から発言されない限りそのような単語を原告らが知る由もない。このように原告らの記憶に残るほど、相当くり返し被告担当者がこの原価主義なる言葉を発していたのである。

さらにその週末の平成七年六月一〇日(土)の午後一時より行われた「資金計画説明会」でも被告担当者から右と全く同様の説明を受けた。

A 餅取氏より、「いろいろ心配なさっている方もいるようだが、一七期・一八期は同じ条件で販売するので安心してほしい」との説明がなされた。

B 「同一施工、同一条件であるから値下げはない。」との説明を受けた。

C 「三棟は同一条件で販売するから心配しなくてよい。」と言われた。

D 「購入物件を五年間売ってはいけない。」ということを強調された。

(二) 平成七年六月七日は、一七期の八階〜一五階の購入予定者を対象とした説明会が開催された。その際の被告担当者の説明の内容は、次の通りである。

@ 餅取氏より、以下の説明があった。

一、 第二一期まで賃貸契約はない。

二、一八期の方が安くなるという噂があるが、そうした事実はないので安心して本日の契約を行って頂きたい。

三、一七期の価格は、一昨年秋(一九九三=平成五年秋)に設定した。

四、一七・一八期では、原価構成は同一。公平さを保つことはデベロッパーとしての役割と考える。

五、融資額は、一七期の方が多い。

A 「三一棟販売時は値下げはしないのか?」という質問に、餌取氏は「第一七・一八期は同一であるため、価格を変更することはできない。」と回答した。

B 『後払い制度採用のお知らせ』にあるように、「三〇〜三二棟は同一条件。」ということを強調し、「一七期の方は、後払い制度を利用できるので、マンションの金額は同じだが、支払う合計額は少ないので得だ。」との説明がなされた。

とにかく「一七期で入居する方が、一八期で入居する方より不利になることは絶対にない。」と連呼していた。

C 「値下げはしないのか?」という質問に対し、餅取氏は、「原価主義」で販売しているため、値下げできない価格構造となっており、値下げはない。」と断定的に回答した。

D 質問に対し、大勢の購入予定者の前で餅取氏が「今後も値下げをしない。」と明確に答えている。

E 被告担当者から「値下げはしない。先に買っても損はさせない。安心して買ってほしい。」との説明を受けた。

F 餅取氏に「空家が多いと困るので、五〇〇万円下げて売っては?」と言ったところ、「一〇〇〇万円下げないと全部売れない。」「値下げはできない。」「被告は値下げできないし値下げしない。」との説明を受けた。

G 手続きの最中、販売センター担当者(女性)に「一七期は解約して一入期での購入を検討している」旨伝えたところ、「一八期は完全な南向きのため、一七期よりも価格が高くなる。」との説明を受けた。そこで、当日受け取った『後払い制度採用のお知らせ』に「一七・一入期は同一設計・施工のためほば同一条件での販売価格を予定している。」と記されている事を指摘すると、奥の部屋から餅取氏が出てきて、「そこにはほば同一条件と書いてあるが、現実に南向きバルコニーの方が不動産価値が高い分、高価格設定にする。」旨の説明を受けた。

さらに価格差について問い合わせたところ、「一入期の価格は未定であるが、同一階であれば一〇〇万単位での価格差になる。一七期の一一階と一入期の五隋であれば、一七期一一楷の方がおそらく安いですよ。引漬しの一年以上に仮契約をした一七期での契約条件の方が、一入期より有利に設定してあるため、契約解除はしない方が得です。」との説明を受けた。

3 被告は、原告らとの売買契約締結後の平成七年九月以降、原告らを含む購入予定者に対し、以下の説明を行った。

平成八年六月頃の土曜日、被告の後払金利変更手続のため、販売センターヘ書類を提出した際、「空いている部屋を値下げすることはないんですか?」と聞いたところ、「新築販売期間中、三年は下げません。また、五年間は下げられません。」との回答がなされた。

二 一八期(三〇棟)を購入した原告らと被告との間の売買契約の経緯

1 被告は、一八期(三〇棟)を購入した原告らを含む購入予定者に対し、売買契約締結前の勧誘時、「譲渡価格設定に関する規定上、公社は、分譲住宅の値下げ販売ができないし、値引き販売もしない。」等の説明をはじめ以下の説明を行ってきた。

(一) 値下げは不可能であるとの説明を行い、一八期の売買契約を締結させた。具体的な被告の説明の方法は以下の通りである。

@ 餌取氏は 「少なくとも若葉台は一〇〇〇万円は高いのは事実である。値下げをした方がいいとの意見を上司にしたが、公社は値下げはしない」と説明した。

A 購入するまでの数ケ月間は毎週土・日販売センターに通い、価格が高すぎることを訴えたら「価格が高いのは確かだが、将来的にも値下げすることはない。後払い制度を利用すると割安な民間マンションと同じくらいになる。」と説得された。

B 被告担当者から「会社なので値下げはできない。」と説明を受けた。

C 購入前に「値下げはできませんか?」と何度か尋ねたところ、「値下げはできません。」との説明を受けた。

D 非常に高い物件なので、購入の際「もう少し安くならないの?」と質問したところ、「安くしません。なりません。」と被告担当者から説明された。

E 今後の値下げについて再三尋ねたが、被告担当者は、「それは絶対にありません。一度決定した価格は、変更できない規則になっています。」との返事を繰り返した。

F 購入前、付近地域の価格より高いので、餅取氏に「売れ残りが出て、一年くらいすれば安くしないのか?」等と尋ねたところ、「若葉台は値下げしない。」と言われた。(値下げはないものと確信して購入を決めた。)

G 平成八年九月一六日、横浜若葉台プロジェクトチーム能勢政一氏は、「販売センターへの来訪者は例外なく値引きはないかと聞くが、公社は一切値引きできないことになっている」と発言している。

H 平成九年三月頃、被告担当者から「この物件(三〇棟)は、四年前に価格が変更された。一度設定された価格は変更できない。」との説明を受けた。

(二) 値下がりした場合には返金する(又は値下がりした場合には対応する)との説明を行い、一八期の売買契約を締結させた。具体的な被告の説明の方法は、以下の通りである。

購入の際、明らかに高いと思ったが、はっきり被告担当者から「今後値下げすることはなく、もし値下げしたときには、入居者にも同一条件を出す。」との説明を受けた。

(三) 公社法・原価主義を論拠とした値下げ不可能との説明を行い、一八期の売買契約を締結させた。具体的な被告の説明の方法は、以下の通りである。

@ 購入前に「値引きできないか?」と質問したところ、被告担当者から「公社の建物は法律で定められているため、できない。」との説明を受けた。

A 購入の前に値下げの可能性を聞いたが、被告担当者から「法律で決まっているので、値下げできません。」との説明を受けた。

B 坪単価が二〇〇万を越える物件なので、「今時そんな物件はない。一〇〇〇万高い。」などと言ったら、「公社法があるから値下げはできない。」と断定的に説明をした。

C 「安くならないのですか?」と尋ねたところ、被告担当者から「公社法という法律があって、下げられないんですよ。」との説明を受けた。

D 被告担当者から、「公社法でディスカウント(値下げ)はできない。」とか「公社の物件は、一度決めた価格の変更ができない。」などの説明を受けた

E 餅取氏より「公社法があり、価格を下げるということはありません。心配なく。」と説得を受けた。

F 購入前、値下げ販売について二回質問して二回とも「値下げは絶対しない。」と餌取氏から説明を受けた。その内一回は、「公社法があるので値下げができない。」との説明であった。

G 公社販売員和田浩氏より「公社法というもので価格を変更できないようになっています。少し高い感じがあるかもしれませんが、今後も変更になることはありません。」との説明を受けた。

H 購入時三棟が完成していたので、未発売の三一棟販売時に値下げの可能性があるか、横浜市中区の公社事務所に問い合わせた所、「原価主義のため、絶対にありません。」との説明を受けた。

I 平成八年九月二三日、被告担当者和田浩氏から「公社の価格は原価積上に基づく適正なもので、値引きはしないし、値下げすることもない。民間業者より絶対有利かつ安全である。」との説明を受けた。

J 平成八年一二月に契約した際、「未だ発売されていない物件(三一棟)があるが、近々値下げしての販売はないのか?」と質問したところ、「若葉台全体としてのバランスや公社の規定で、値下げ販売は絶対できない。」との説明を受けた。

三 以上の被告による「値引き販売をしない」という言動は、原告ら一四三名に対し、様々なセールストークにて示されているが、原告らは全員被告担当者から明示的・黙示的に「値引き販売しない」との説明を受けているのである。

四 被告担当者が右説明を行った理由

被告担当者が原告らに対し、「値引き販売はしない」と断定的な判断を提供した理由は、地方住宅供給被告法施行規則第六条第一項が次の通り規定しているからである。

第六条(積立分譲住宅の譲渡の対価)

積立分譲住宅の譲波の対価は、積立分譲住宅の建設費、積立分譲住宅の建設に要した資金の利息又は利息に相当する金額、分譲事務責、空家等による損失を補填するための引当金及び公租公課を合計した金額を基準として、地方公共団体が定める。

右規定は、いわゆる原価主義に基づく規定であり、被告は、原告ら購入予定者に対し、原価主義で販売する以上、一切値引きはできないと述べてきたのである。

五 被告による債務不履行

被告担当者は、原告らに本件物件を販売する際に「三〇・三一・三二棟は同一条件で販売する」「公社は原価主義を採用している以上、値下げ販売をすることは出来ない」との説明し、且つ原告らに対し提供したパンフレットには、「原価から見て適正な価格」で販売する旨明示し、要するに原告らに対する販売価格は、今後の販売に当たっても維持されるとの意思表示をしているのである。

以上の被告のパンフレットによる広告及び被告担当者の説明に照らせば、被告は若葉台団地の分譲価格を設定するに際しては、原価から見て適正と判断した価格を遵守し、当該価格を維持する義務を負担するというべきである。

にもかかわらず、被告は一方的に最大四四・六%もの値下げをして第二期譲渡を始めたのであり、当該値下げ譲波が原価遵守・価格維持義務に違反することは明かである。

六 被告による不法行為

前記第二、一ないし三に詳細に述べたとおり、被告は原告らに対し「公社は民間とは異なり、販売に際しては、原価主義を採用しているので値下げしての販売は出来ない。」「公社の規定によると公社の販売物件は一度決定した価格を変えることはできない。」等の説明を再三に渡り行った。

被告は、本来同一ないし類似物件については市場動向との関係で値下げしうる可能性があるにもかかわらずあえてそれを伏して右説明をし、本契約を締結させたものであり、原告らは今後、若葉台団地の同種物件について値下げ販売がなされることはなく、原告らが取得する物件について価値減少を来す虞はないと誤信して本件契約に応じたものである。

以上より、右誤信を生ぜしめた被告担当者のセールストークの違法性は極めて高いことは明確であり、同違法なセールストークにより本件物件を購入させた被告は、第一期譲渡価格と第二期譲渡価格の差額相当額の損害賠償責任を負う。



平成一二年(ワ)第一一五七号損害賠償請求事件

平成一二年一〇月三一日

横浜地方裁判所

第五民事部合議係 御中

準 備 書 面

 

一 被告の債務不履行についての補充

 1 被告の負う債務不履行の追加的主張

   本件原告らと被告との間の売買契約の要素は何か。売買の目的物と価格である。本件売買契約の目的物については、原告ら各自が現に取得した不動産であることは明白であるが、本件売買契約における価格とは、「原価に基づく適正な価格」である。なぜならば、被告が、本件売買契約締結の過程において、被告が「原価に基づく適正な価格」で売買すると、本件原告らに表示しているのであるから、である。

2 債務不履行

   被告自身によると、「施行規則第六条第一項に基づき、同条項が規定する諸費目を合計した金額を基準とし、様々な要素を考慮して」、然るべく譲波価格を決定できるのだから、本件若葉台団地一七期・一八期の新規販売時には「若葉台団地周辺の民間分譲住宅を中心とした市場動向を考慮しつつ譲渡価格を決定した」とのことである(被告準備書面三の二頁)(なお、施行規則六条については後述)。

   そして、実際に本件若葉台三一棟新規販売の譲波価格決定の際には、乙一〇ないし一三に基づき決定された(被告準備書面二一貫から二三)。譲濃価格決定の際の重要資料である乙一〇ないし一三の内容を見ると、たとえば乙一〇の一八頁は、比準価格のみを採用し、乙一三号証は比準価格と、販売時の地価等を基準にして積算された積算価格に基づき決定されている。確かに、右証拠によれば被告主張のとおり「若葉台団地周辺の民間分譲住宅を中心とした市場動向を考慮しつつ譲渡価格を決定し」ているように思われる。

   しかし、本件原告らの販売については、被告も認めているとおり、現実に一七期販売も相当数売れ残り、一八期二次に至っては当初全く売れなかった(被告準備書面一七頁以下第五)のである。被告が主張のとおり「若葉台団地周辺の民間分譲住宅を中心とした市場動向を考慮しつつ譲渡価格を決定し」「原価に基づく適正な価格」で販売されていれば、右のようなことが起こるはずがないのである。本件販売価格は「原価に基づく適正な価格」などではない、と事実上推定される。

それゆえ、仮に被告が、本件売買契約が「原価に基づく適正な価格」でなされた、と主張するのであれば、被告自らが主張するところの「施行規則第六条第一項に基づき、同条項が規定する諸費目を合計した金額を基準とし」、「若葉台団地周辺の民間分譲住宅を中心とした市場動向を考慮しつつ譲波価格を決定し」た、と主張するのであろうから、第六条が規定する諸費目は一体いくらであったのであり、それに対し、若葉台団地周辺の民間分譲住宅の動向をどのように調査し、どのように考慮した結果、販売価格を決定し、それを「原価に基づく適正な価格」と主張するのか、具体的資料を提示して立証すべきである。

二 なお、施行規則六条一項、二項の関係等を含め次回準備書面で原告らの主張を整理する予定である。

以 上


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