2000/9/27
原告側準備書面(第3回口頭弁論から)


平成一二年(ワ)第一一五七号

準備書面

横浜地方裁判所第五民事部御中

 

第一 当初譲渡価格における土地価格の異常な価格設定行為
   四年で三分の一に

 原告ら平成一二年八月八日付け準備書面における主張を補足して次の通り主張する。

1 原告らは、本件契約における譲渡価格に関し、当初譲渡価格と、今回の譲渡価格における平均四四・三八パーセントの値下げを問題としてきた。
 しかしながら、厳密には、不動産価格は土地価格と建物価格より構成されており、その構成内訳を見ると、当初譲渡価格及び値下げ価格の比較において、土地価格が特に異常な変動をきたしていること、それを合理的に説明できる経済状況の変動がこの間の地価の変動には存在していないことが明らかになる。

2 表1に新規値下げ販売額と元値(当初譲渡価格)との関係を、表2に不動産鑑定額と元値との関係を示す。
 表中、元値の土地価格と建物価格の内訳は、譲渡価格に表示された消費税額より以下の式により求めた。

 

(建物代分)=(消費税)×一・〇三/〇・〇三
(土地代分)=(総額)−(建物代分)


3 表より、今回の新規販売額が横浜総合コンサルティング小林千秋氏と横浜綜合鑑定事務所志賀善典氏による鑑定結果の単純平均値となっていることがわかり、この点は被告は新規販売額を不動産鑑定額から決定したと説明していることと矛盾しない。

4 表2より不動産鑑定額の建物価格は、元値から減価償却分によると見られる二・九〜一七・一%(平均で九・五%)下がっているだけである。
 この数字は、建設から分譲まで四年を経過していることから、その間の減価焼却、建物の傷みを考えれば合理性のある数字と見ることができる。
 一方で不動産鑑定額の土地価格は、当初分譲時の土地価格から実に六七・六〜六九・五%(平均で六八・六%)も下がっている。
 この値下げは、実に当初価格が四年で約三分の一になるという異常な値下げである。
 今回分譲価格に関しては、原告らには消費税額が判明していないので、実際の土地と建物の価格構成は明確ではないが、前述のように不動産鑑定に従って価格が決定されていることから、右推計とほとんど同一のはずである。

5 被告は、価格引き下げの原因としてバブル経済の崩壊とそれによる需給の緩み、それが予想外であったことを主張する。
 原告らも一般論としてのバブル崩壊を一切否定するものではないが、それを理由にいかなる暴利行為や異常な価格設定行為を行っても、民事上の責任を免れるということにはならない。
 土地や株式、会員権など個別具体の事例において、さらに土地であればその地域や物件の事情をも考慮して、そこで行われた経済的行為の具体的内容を考慮して、それが予想外の事態の出現であり、経緯に照らし合理的でありやむを得ないと考えられる価格変更であるのか、それとも具体的事情に照らすならば、当然予測すべき範囲の変動しかなく、大幅な価格変更が合理的には説明できない価格設定であったのか、それを個別具体的に検討して、当該行為が民事上の許容範囲であるのか否かを判断すべきである。

6 ちなみに、この間の周辺における土地価格の変動は、被告が利用した不動産鑑定書において参照されている公示地点の地価でみればその経年変化は次のとおりであり、平均して平成七年から平成一一年の四年間の下落率は一二・〇八%にすぎない。

           平成七年       平成一一年     下落率
 横浜旭四四   二六九、〇〇〇円   二三五、〇〇〇円   一二・六四%
 横浜緑九    二九五、〇〇〇円   二六一、〇〇〇円   一一・五三%

 国土庁が平成一二年度地価公示に関連して公表した、公示価格の年別変動率を見ても、東京圏におけるこの間の住宅地の公示価格の対前年変動率は
 平成八年  マイナス五%
 平成九年  マイナス三・四%
 平成一〇年 マイナス三%
 平成一一年 マイナス六・四%
 とされており、確かに継続して下がり続けてはいるものの、トータルで二〇%以下の変動であり、本件における土地価格の異常な値下げを合理的に裏付けるような変動ではあり得ない。


7 これらの客観的数値と対比しても、平成七年から平成一一年の四年間における土地価格の六八・六%もの値下げは全く合理的な根拠を欠くものであり、バブルの崩壊と言うだけで正当化できるような数字で無いことは明白である。
 これは値下げ後の価格が平成一一年時点における公正な鑑定に基づく市場価格に基づいているとすると、逆に当初の譲渡価格が特に土地価格において、市場価格から著しく乖離していた価格であったと言うほか無い。
 逆にそれ以前の公示価格の変動を見ると
 平成二年  六・六%
 平成三年  六・六%
 平成四年  マイナス九・一%
 平成五年  マイナス一四・六%
 平成六年  マイナス七・八%
 平成七年  マイナス二・九%
 となっており、平成五年に大幅な低下を来したものの、その後は平成六年頃から緩やかなマイナス傾向を示しており、当初譲渡の行われた平成七年から、平成一一年までの間には、大きな変化を来していない。

8 平成一二年八月二三日付被告準備書面では、「第六条第一項は、被告が分譲住宅の譲渡対価について決定する権限を認めその基準を示す条項であって、被告が、譲渡の対価を決定するに当って、同条同項に規定する諸費目の合計金額を標準にして、市場の動向等をその要素として考慮することは何ら妨げられるものではない。被告が原告らに譲渡した分譲住宅の対価は、被告が、いずれも当該時期において、若葉台団地周辺の民間分譲住宅を中心とした市場の動向を考慮し決定した価格である。」と主張するが、本件における当初の土地価格の設定は、平成一一年における値下げ価格にそれなりの合理性があるとすると、むしろ市場動向を全く無視して対価が決定されたことを伺わせるものである。
 このような当初譲渡価格における(土地)価格の設定について、被告が行った鑑定価格及び地価公示等の客観的資料からは何らの合理性は見いだせず、むしろ異常性が明白な状況である。
 当初譲渡価格について被告が正当性を主張するのであれば、原告らの求釈明に応じていかなる資料と判断根拠に基づきそれが設定されたのかを明らかにして、その合理性を主張すべきである。


表1.新規販売額と元値との関係

部屋番号

タイプ

元値a(万円)

新規販売額b

値下率1-b/a

 

 

建物

土地

消費税

総額

(万円)

(%)

32-604

G

2343

3222

70.3

5635

3125

44.5

30-504

F2

2180

3274

65.4

5519

3125

43.4

31-803

G'

2434

3330

73.0

5837

3245

44.4

注)31-803の元値、値下げ率は32-604と30-504の平均値からの推定値

 

表2.不動産鑑定額と元値との関係

部屋番号

タイプ

元値a(万円)

鑑定額c(万円)

値下率1-c/a(%)

 

 

建物

(税込)

土地

消費税

総額

建物

土地

総額

建物

土地

総額

32-604

G

2414

3222

70.3

5635

2230

1010

3240

7.6

68.6

42.5

 

 

 

 

 

 

2000

1010

3010

17.1

68.6

46.6

 

 

 

 

 

 

2115

1010

3125

12.4

68.6

44.5

30-504

F2

2245

3274

65.4

5519

2180

1060

3240

2.9

67.6

41.3

 

 

 

 

 

 

2012

998

3010

10.4

69.5

45.5

 

 

 

 

 

 

2096

1029

3125

6.7

68.6

43.4

31-803

G'

2364

3389

70.9

5825

2240

1080

3320

5.3

68.1

43.0

 

 

2504

3270

75.1

5849

2159

1011

3170

13.8

69.1

45.8

 

 

2434

3330

73.0

5837

2200

1046

3245

9.5

68.6

44.4

平均

-

-

-

-

-

-

-

-

9.5

68.6

44.1

                         

注1)31-803の元値、値下げ率は32-604と30-504の平均値からの推定値

注2)鑑定額、値下率の上段は横浜総合コンサルティング小林千秋氏による鑑定結果、

中段は横浜綜合鑑定事務所志賀善典氏による鑑定結果、下段はその平均値

 

公示価格年別変動率

(単位:%)

 

住宅地

東京圏

大阪圏

名古屋圏

三大圏平均

地方平均

全国平均

昭和58

4.1

5.3

4.5

4.5

5.6

5.1

59

2.2

3.6

2.4

2.6

3.5

3.0

60

1.7

3.0

1.6

2.0

2.4

2.2

61

3.0

2.6

1.4

2.7

1.7

2.2

62

21.5

3.4

1.6

13.7

1.2

7.6

63

68.6

18.6

7.3

46.6

1.9

25.0

平成元

0.4

32.7

16.4

11.0

4.4

7.9

2

6.6

56.1

20.2

22.0

11.4

17.0

3

6.6

6.5

18.8

8.0

13.6

10.7

4

△ 9.1

△22.9

△ 5.2

△12.5

2.3

△ 5.6

5

△14.6

△17.1

△ 8.6

△14.5

△ 1.7

△ 8.7

6

△ 7.8

△ 6.8

△ 6.1

△ 7.3

△ 1.2

△ 4.7

7

△ 2.9

△ 1.9

△ 4.0

△ 2.8

△ 0.3

△ 1.6

8

△ 5.0

△ 4.3

△ 3.6

△ 4.6

△ 0.6

△ 2.6

9

△ 3.4

△ 2.2

△ 1.7

△ 2.8

△ 0.4

△ 1.6

10

△ 3.0

△ 1.5

△ 0.8

△ 2.2

△ 0.6

△ 1.4

11

△ 6.4

△ 5.2

△ 3.3

△ 5.7

△ 1.9

△ 3.8

12

△ 6.8

△ 6.1

△ 1.8

△ 5.9

△ 2.3

△ 4.1

 


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