2001/5/25
被告側準備書面(第7回口頭弁論から)

平成12年(ワ)第1157号 損害賠償請求事件

                 準 備 書 面 (6)

横浜地方裁判所
第5民事部合議係 御中


原告らの主張に対する反論

1 債務不履行に基づく損害賠償請求権
(1)価格維持義務違反
@原告らがいうところの価格維持義務とは、契約締結から少なくとも5年間は、原被告双方とも、原価主義によって定められた価格を遵守、維持すぺき」義務(訴状7頁)、あるいは、同一ないし類似物件については、同一価格で譲渡すぺき義務」(原告ら平成12年12月27日付準備書面28頁である。しかし、被告にかかる義務があるとするのは、原告らの独自の見解にす
きない。
原告らが主張する同義務の根拠及ぴそれに対する被告の反論は、以下のとおりである。

(i)原告らがいうところの原価主義(施行規則第6条第1項)、譲渡制限
(同第7条第1号)の趣旨に照らした、本件分譲住宅譲渡契約の解釈(訴状7頁以下)。
そもそも、施行規則は、行政命令であって、行政命令をめぐる紛争、行政命令への適合性の有無は、司法審査の対象となるものではない(被告平12年8月23日付準備書面9頁)。施行規則第6条第1項は、分譲佳宅の譲渡対価の決定に際し、同項が掲げる諸費用を合計した金額
を標準として決定することを要請してはいるが、その合計金額をもって分譲住宅の誰渡の対価とするとは定めておらず、それを目安として地方公社が様々な要素を考慮してその上方であっても下方であっても然るぺき価格を決定すぺきことを定めているにすぎない(同準備書面10頁)、また、施行規則7条第1号をふまえた原告らと被告との分譲住宅醸渡契約における5年間の譲渡制限規定は、同契約が自ら居住する目的で購入する者との間で締結される必要性を達成するためのものであるが、同規定が存在するからといって、5年間は当該価格を遵守維持すぺき義務が発生するわけではない(同準備書面144頁)、この点、東京地裁平成12年8月30日判決(判例タイムズ1039号。乙25)も、「再譲渡制限の趣旨・目的に照らすと、原告ら主張の意味で公団が再譲渡制限条項に拘束されるとはいえない。」と判断している。この判断は、本件においても妥当する。


(A)被告は、若葉台団地を一手に開発して、同団地の住環境を維持、発展させる立場にあるから、本件分譲住宅譲渡契約は、個々人と民間事業者との1回的諏浪とは異なる(原告ら平成12年12月27日付準傭書面27頁)。
仮に、被告が、原告らが主張するような立場にあるとしても、被告と原告ら各人との間の分譲住宅譲渡契約は、当該分譲住宅の譲渡という意味で、民間事業者のそれと全く異ならず、特別な義務が発生するわけではない。


(B)被告は、「値引き販売をしない」との意思表示をした(原告ら平成12年12月27日付準備書面28頁)。被告の販売担当者と原告らとの具体的なやりとりについては、詳細は知らない。仮に、原告らが指摘するような、「値下げ販売はしない」というような発言があったとしても、その時点では値下げ販売は予定されていないという意味にすぎない。また、被告の販売担当者の発言は、個人的見解にすぎず、これをもって被告の意思表示とすることはできない。
この点、大阪地裁平成10年3月19日判決(乙22)は、被告ら販売担当者らの言動として、次期以降の販売価格を値下げする予定はない旨回答したこと、当該住宅地の値下げ販売の予定はない旨回答したこと等を認定した上で、「被告ら販売担当者らの言動は、…いずれも、個々
の被告ら販売担当者らの見解として述ぺたもの」であるとしている。

Aまた、大阪地裁平成11年6月17日判決(乙23)は、被告らは、売買契約の余後効として価格維持義務を負っており、値下げ販売は、売買契約上の債務不履行にあたるとする原告らの主張に対し、「特定物売買における売主は、売買契約の目的物の所有権を買主に移転するとともに、その引渡を終えれば、売買契約の目的は達成されるから、特段の事由がない限り、もはや売主が売買契約上の債務を負うことはない。」とした上で、右特段の事由も存在
しないとして、原告らの主張を排斥した。この理は本件においても同様である。


Bなお、東京地裁平成8年2月5日判決(判例タイムズ907号188頁。乙21)は、値引き販売ば信義則上の義務違反であるという原告らの主張に対し、「一般に、不動産の価格は、需要と供給の関係で決まるものであり、不動産市況により価格が変動することは自明の理ともいうぺきことであるから、マンションの販売業者である被告に、売買契約締結後に不動産市況の下落があっても尚当該販売価格を下落きせてはならないという信義則上の義務があるとは認められない」ど判断している。この判断は、本件においても妥当する。

(2)説明義務違反
原告らがいうところの説明義務とは、「本件各物件を含む若棄台団地の販売状況(譲渡時点での売れ残りやキャンセルの状況)に関する情報を開示し、本件住宅における値下げ販売の可能性を説明すぺき義務及ぴ販売状況や販売の可能性に関する質問に対して虚偽の説明をしたり、将来的に値下げ販売をしない等の断定的な情報を提供したりしてはならない義務」である(平威12年12月27日付準備書面11頁)。しかし、被告にかかる義務があるとするのは、原告らの独自の見解である。その理由は、以下のとおりである。

@原告らは、原告らと被告担当者との問答は、譲渡契約締結にいたる際の重要事項に該当するので、本件譲渡契約の契約内容を形成する、と主張するが(同準術書面12頁)、その意味が良く分からない。
また、原告らは、不動産取引における説明義務に関する裁判例を列挙しているが(同準備書面14頁)、いずれも、既定の行政指導や建築計画の存在を知りながら告げなかった事例であり、本件には不適切である。
A原告らは、被告は民間事業者とは異なる公共的存在であるとし、宅地建物取引業法の適用を受けないことを理由に、民間の宅地建物取引業者を上回る説明義務が要求されるとしている(同準傭杳面16頁)。
被告を含む地方住宅供給公社には、同法の適用はない(公社法第47条)。しかし、被告は、自らの責任で、分譲住宅の買主に対しへ物件に関する説明を尽くしている。その説明の内容や程度が、艮間業者のそれを上回るぺきであるとする根拠は、全くない。
B原告らは、若葉台団地の分譲庄宅の譲渡価格は、原告らのいうところの原価主義により、純粋の市場原理によらない特殊なシステムによって決定されるとする(同準備書面18頁)。
しかし、従前から主張しているとおり、若葉台団地の分譲住宅の譲渡価格は、施行規則6条第1項、第11条が掲げる諸費用を合計した金額を標準としつつ、様様な要素を考慮して、被告が決定するのであり、そこに市場原理が働くことは、他の民間業者の場合と同様である。
Cまた、原告らは、若棄台団地では被告だけが物件を独占して供給できる状況にあったとし、そこでの不動産価絡は、単に市場の動向によって変動するものではなく、被告の販売計画(販売数量、時期、価格等)により大きく影響を受けるとする(同準備書面19頁)。
確かに、若葉台団地内の新規販売物件は被告だけが供給しているが、販売価格の決定に市場原理が働くことはすでに述ぺたとおりであり、被告に若葉台団地を含めて不動産市場価格の形成カがあったわけではない。
Dさらに、原告らは、不動産の価格動向は、購入者が当該不動産の購入を決定するにあたっての重要な要素であり(同準備書面21頁)、被告が、不動産価格の動向、将来の予測に関する専門的知識や情報を独占していたとする(同準備書面20頁)。
しかし、被告が、上記専門的知識や情報を独占していた事実はない。原告らにとり、若策台団地の物件は、購入を検討していた複数の物件一つにすぎなかった。原告らを含む購入希望者は、当時、不動産の購入を検討するにあたり、不動産の価格動向等について、情報誌その他の資料からの情報を有していた。
E原告らは、被告が民間業者以上の信頼を得ており、不動産価格の動向等に関する情報を独占し、特殊な価格決定システムを使用していたことから、若葉台団地の販売状況(とりわけ物牛の売れ残りやキャンセルの状況)、地価の動向、値下げ販売の可能性等を正確に知らせる義務(一般的説明義務)があったとする(同準備書面23頁)。
しかし、被告は、売買対象の性状、権利関係、法的規制等についての説明義務を負うが、原告らが主張するような地価の動向、値下げ販売の可能性、物件の売れ残りやキャンセルの状況について説明する法的義務を負うものではない。
なお、大阪地裁平成10年3月19日判決(乙22)は、「売主において売買契約締結以後の地価の勤向や将来の値下げ販売の可能性等につき、当然に買主に説明すべき法的義務かあるとは考えられず(不動産の価格が需要と供給の関係や経済情勢等により変動するものであるだけに尚更である。)、右説明をなきなかったとしても、説明義務違反等の責任を負うものとは解しがたい。」と明言している。また、東京地裁平成12年8月30日判決(乙25〉も、値下げ販売に関する事項についての説明義務を否定している。
Fまた、原告らは、契約の取引相手に対して、誤った情報、不正確な情報を提供したり、断定的判断を提供して、突約締結もしくは決済を働めることは許されない、と主張する(同準備書面24頁。虚偽説明回避義務)。しかし、値下げ販売に関する事実関係ぱ前述のとおりである。

(3)原価に基づく適正な価格による譲渡義務違反
@原告らは、被告は、「原価に基づく適正な価格」で譲渡することを契約内容としているとし(同準備書面25頁)、その理由として、被告は、パンフレット(乙8の3、乙9の2)あるいは説明に際し、原価に基づく適正な価格で譲渡することを契約内容とすることを意思表示したとする(原告ら平成12年9月21日付準備書面5頁)。
しかし、上記パンフレット中の記載は、住宅金融公庫付分譲住宅のパンフレッに一般的にられているものを掲載したにすきない(被告平成12年11月1日付準備書面3頁)。また、被告販売担当者の発言について子細は承知していないが、仮にそれがあったとしても、それを被告の意思表示とすることはできないことは、すでに繰り返し述ぺてきた。
また、原告らは、その自由な意思により被告と分譲住宅譲渡契約を締結したのであるから、その譲渡価格、すなわち、被告が、施行規則第6条第1項、第11条に基づき決定した価格こそが、当時の適正価格であったのであり、それが迦って高値であったと非難されるいわれはない(同準備書面5頁)。
A原告らは、「原価に基づく適正な価格」が契約内容を構成していないとしても、それは、契約締結への誘因となる基礎事実であるとするが(原告ら平成12年12月27日付準備書面26頁)、その意味するところが良く分からない。
また、原告らが「『原価に基づく適正な価格』が…契約の誘因となる基礎事実である。したがって、被告が高値の価格を設定1し、これを譲渡金額としたことは、前記記載の虚偽の説明を回避すべき義務に違反したものといえる」(同準備書面同頁)とする理由も分からない。被告が施行規則第6条第1項、第11条に基づき決定し、原告らが購入した物牛の価格が当時の適正価格であったことは前述のとおりである。
Bなお、原告らは、本件訴訟の当初、被告の原告らに対する譲渡価格の設定について、原告らのいうところの原価主義(施行規則第6条第1項)に違反すると主張していた(訴状等)。しかし、施行規則は、行政命令であって、行政命令をめぐる紛争、行政命令への適合性の有無は、司法審査の対象となるものではないことはすでに述ぺたとおりである。また、原告らが主張するところの原価主義についても、原告らは、「譲渡価格を決定するについて、当時の市腸性を考慮する等しての利益を、全く考慮すぺきものではないとはいえない」と主張する一方で、「利潤追求を積極的に認める」ことは許されないことであるかのように主張しており(原告ら平成12年9月2日付準備書面)、その内容が不明である(被告平成12年11月1日準備書面)。
そして、東京地裁平成12隼8月30日判決(乙25)は、公団が、施行規則の価格決定方式(原価主義)によって譲渡代金を定めるぺき義務に違反して本件譲渡契約を締結させたから、不法行為を構成する、という原告らの主張に対し、「公団ぱ原告らとの関係では」施行規則に「拘束されないことは前記…のとおりである」と判断している。極めて妥当な判断というぺきである。

2不法行為に基づく損害賠償請求権
(1)著しい価格格差の回避義務違反
@原告らがいうところの「著しい価格格差の回避義務」とは「譲受人の譲渡時期によって著しい価格格差が発生することを回避する義務」である(訴状11頁、原告ら平成12年12月27日付準備書面29頁)。そして、その具体的な内容として、(i)早急に価格を是正して、著しい価格格差の発生を回避すぺきこと(同準備書面32頁)、(A)空き部屋発生を回避するぺく多様な物件販売手法を採用すること(同準備書面同頁)、(B)市場価格から見て著しい価格差が生じた時点で直ちに価格是正を検討し、空室防止の観点から譲渡価格を修正する必要があり、その際に、原告らに対しても減額措置を講じて不平等を是正すぺきこと(同準備書面33頁)を掲げているようである。
しかし、上記内容(i)(A)の「著しい」とは、いかなる程度なのか、比較の対象とする価格をいつの、どの物件のものとするのか等、選択の基準が明らかでない。また、(A)の「空き部屋の発生を回避するべく多様な物件販売手法」とは具体的にとのようなことを指すのかも不明である。
A「著しい価格格差の回避義務」の上記内容(i)(A)(B)から推測すると、原告らは、価格の格差が「著しい」ものとなる以前に、被告は、こまめに各種措置を講じるぺきであると考えているようである。他方で、原告らは、価格維持義務(同一ないしは類似物件については、同一価格で醸渡すぺき義務)の存在を主張している。原告らは、これらの主張は選択的な関係にある
とするが、一方で、価格をこまめに調整すべきとし、他方で、価格を維持すべきとするのは、主張の内容が整合しないこと甚だしい。


B原告らは、分譲住宅譲渡契約における譲渡価格を土地価格と建物価格とに分け、原告らが購入した時点では、右譲渡価絡と市揚価格の間には著しい格差が生じていたという(原告ら2001年3月28日付準備書面等)。しかし、右契約が、土地と建物とを個別に売買することを目的としたものではなく、敷地権付建物という1つのユニットを売買することを目的としている以上、譲渡価略、を土地価格と建物価格とに分けることは全く意味がない。また、右譲渡価格は、施行規則6条第1項、第11条に基づき、被告が定めることのできるものである。そして、右価格は、被告と原告らとの分譲住宅譲渡契約の契約書(乙2の2、乙3)に記載されており、原告らは、その金額で購入することを自らの意思で決定して契約したのである。すなわち、原告らが購入した物件の価格そのものが、その時点での適正価格なのである(被告平成12年11月1日付準備書面4頁)。原告らが地価動向を懸念し、購入によるリスクを回避したいと考えるなら、物件を購入しなければよいのであって、原告らはそのような自由を有していたものである。
Cまた、原告らは、被告が、漫然と市場価格から著しく背離した譲渡価格を何年にも亘り設定し、全く原告らの住環境整備のため、空室減少措置をとらずにいた、と主張するが(原告ら平成12年12月27日付準備書面33頁)、被告が、様々な販売努力をしたが、及ぱず、値下げ販売に踏み切った事実経過は、すでに述ぺたところである(被告平成12年8月23日付準備書面7頁以下)。

(2)価格維持義務違反
1(1)に同じである。

(3)原価に基づく適正な価格による譲渡義務違反
1(3)に同じである。

(4)説明義務違反
1(2)に同じである。

(5)原告ら、東京地裁平成10年1月23日判決(判例タイムズ991号206頁〉を引用しているが(原告ら2001年3月28日付準備書面8頁〉、これが同判決中の「贈入者の不測の損害の発生を防止するため、正確ではないにしてもおよそその現地価格などの基本的な事項を説明した上で、購入の勧誘をすぺきである」注意義務違反を新たに主張するのか、前記2(1)ないし(4)のいずれかの補足説明にすぎないのか、判然としない。いずれにせよ、同判決は、海外の物件の売買に関するものであって、国内の物件で、かつ、充分な情報が買主に提供されていた本件には適切でない。

3不当利得に基づく「損害賠償」請求権
(1)原告らは、被告の原告らに対する分譲住宅の譲渡行為は、その譲渡方法、価格の著しい不均衡からして暴利行為を構威する、と主張する(2001年3月28日付準備書面7頁)。しかし、以下に述ぺるとおり、被告の譲渡行為が暴利行為とは言えないことは明らかである。
(2〉暴利行為とは、他人の無思慮・窮迫に乗じて不当の利を博する行為である(我婁榮「民法総則(民法講義I)」274頁)。原告らは、原告らに対する譲渡価絡は、当時の適正価格の約2.7倍だったと主張するが、原告らに対する譲渡価格そのものが当時の適正価格であったことは、再三述ぺてきたとおりである。この点、大阪地裁平成10年3月19日判決(乙22)は、「本件住宅地の原価が一定であることを前提として、被告らの給付と本件各物件の販売価格との対価的不均衡の発生を判断することが相当とは思われないし、そもそも、後記のとおり住宅地のいわゆる適正価格が原価との関係で一律に算定されるものとも思われないのである。…
そもそも、住宅地の売買の場合であっても、その販売価格は、自由経済、市場経済の中で、原則として当事者の合意によって形成されるもので、右価格につきどのような合意に達するかは、需要と供給の相互の関係や、契約時の経済情勢等に大きく影響されるものなのであり、実際の販売価格が適正なものであるかどうかは、住宅地の原価のみから判断しうるものではないのである。」と述ぺている。
また、原告らは、被告が、譲渡価格が決定されるに至った過程を何ら具体的に説明することなく、不動産の価格決定の方法等につき知識を有しない原告らに対し、虚偽のセールストークを用いて、適正術格の約2.7倍の価格物件を適正価格と称して譲渡した、と主張する。しかし、分譲住宅譲渡契約の勧誘及ぴ締結に際し、譲渡価格が決定きれる過程の説明は不要であるし、また、主張のような事実もない。上記判決も、「被告らが原告らの窮迫、軽率無経験等に乗じ、その自由な意思決定を不当に妨げて、本件各物件を購入させたものであるとまでは認めるに足りない。」としている。また、大阪地裁平成11年6月178判決(乙23)も、「原告らは、原告らマンションを買わなければならない特段の事情があったわけではなく、市販の住宅情報誌等から情報を得、他の競合物絆と比較検討し、…本件全マンションの価格表、融資関係の案内、間取り図その他パンフレットの交付を受け、その重要事項について説明を受けた上で、本件各売買契約を締結しているのである…
から、被告らが、原告らの無思慮、窮迫及ぴ無経験等を利用して本件各売買契約を締結したということはできない。」としている。本件も、また、同様である。
以上からして、原告らの主張に理由のないことは明らかである。

4原告らの損害の不発生
(1)原告らは、損害額の算定について、裁判例を引用しつつ、独自の主張をしている(2001年3月28日付準備書面9頁)。そこで引用されている裁判例は、いずれも、商品の属性や特性に関する説明義務及ぴ同義務違反の場合の損害額に関するものである。一方で、原告らが本件で問題にしているのは、将来の価格の変動に関する説明義務なのであって、引用にかかるこれらの裁判例は、いずれも本件には適切でない。
(2)また、本件において、原告らには損害は生じていない。
まず、原告らは、「第1期譲渡価格と当時の適正価格との差額」を損害としているが、すでに述ぺているとおり、原告らは、みずから承知してその譲渡価格で購入しているものであって、それは、とりも直さず原告ら自身その譲渡価格を当時の適正価格と認めたことに他ならない。そこでは損害の発生ということは考えられない。
また、原告らは、「第1期譲渡価格と第2期譲渡価格との差額」をも損害としている。即ち、原告らは、それぞれが購入した若葉台団地内の物件を所有したまま、購入当時の価格と、値下げ販売時の価格とを比較して、その差額を損害として主張しているものである。しかし、不動産の価格は常に変動しており、原告らの購入当時から値下げ販売時に至るまでの間は下落傾向にあったものの、今後、どのように推移するかは、誰にも分からない。仮に、今後、不動産価格が上昇傾向に転じたときには、原告らが現在主張するところの損害が埋め戻されることがありうるぱかりでなく、更に、原告らの購入価格を上回ったときこは、原告らは利益を得ることにさえなりうるのである。
果たしてこのとき、原告らは、いかなる主張をし、またいかなる対応をするのであろうか。原告らは、原告らがその購入物牛を所有している間の一部の時的区間の不動産価格の変動をとらえて、仮の議論をしているにすぎないのである。原告らには、賠償されるぺき損害はない。

以上



今回はFAX書面からの転載につき、誤記及び記入ミス等はご了承ください。 住民の会


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