横浜若葉台訴訟原告団意見陳述
平成12年6月14日
横浜若葉台訴訟原告団

 本日は、私達"横浜若葉台訴訟原告団"に対し、意見陳述の場を賜り、誠に有り難うございます。これまで私達は、今回の問題について、一貫して売主である神奈川県住宅供給公社に対し、話し合いによる解決を要求してきました。そんな私達が、最終的に法的手段に訴えざるを得なかった経緯を述べさせていただきます。

1) 発売から値下げ販売決定に至る経緯
 現在私達が居住する、横浜若葉台団地4丁目30棟・32棟は、神奈川県住宅供給公社、(以下"公社"と述べさせていただきます)が"環境共生"をうたい文句に開発を続ける横浜若葉台の第17期・18期として、平成6年3月より順次発売されたものです。最初に発売された32棟(17期)の最多価格帯は5700万円台。当時の相場から考えても若干高めの設定でしたが、若葉台全体の環境、県が出資する公社への信頼感から、発売時点で完売、一部住戸以外は抽選となる盛況でした。
ところが、当物件は、発売に際し公社が、"積立分譲制度"という独自の方式を採用したため、購入申し込みから、住宅の完成・譲渡までに1年半近い時間がありました。この間に、中古を中心に住宅市場が一気に冷え込み、若葉台第17期には112戸中、38戸のキャンセルが発生しました。
それは、この時、既に、私達素人の目で見ても、若葉台17期の販売価格は市場価格の水準を遥かに上回るものだったからです。従って、購入に踏み切ろうとする申込者も、ほとんどが当時の販売担当を通じて、将来の値下げの可能性について公社に問い合わせをしています。
 これに対し公社は、「値下げすることになったので後日お知らせします。」と言ったり、「公社法により値下げはできないことになっています。」と言ったり、「民間業者を圧迫することになるので値下げはできませんが、何らかの対応を検討中です。」と言ったり、実に場当たり的でいい加減な回答を繰り返した挙句に、「30・31・32棟は同一条件で販売する。17期(=32棟)購入者に不利が生ずることはないので、安心して購入して欲しい。後発物件の販売条件が変われば、既購入者にも遡及措置を講じる。」という回答をしてきました。
明らかに公社は、この時点で、当物件の販売価格の割高感を認めていることになり、値下げ販売の根拠をごく最近の経済情勢に帰しているのは、全くのごまかしであり、居直りであるといえるのです。
また本契約直前の平成7年6月6日には、公社は正式文書により、「本来17期及び18期は同一の管理組合に属し、はたまた施工JVも同じ事等から、予定価額を含めた18期の募集計画に於いては、同程度の設定が必然であると考えます。」と将来に渡る同一条件販売を明文化しています。
 当時、後発物件2棟194戸の値下げを懸念し購入をためらう私達の多くは、公社の提示した購入後の同一条件保証を信じて購入したのです。言い換えれば、"良質な住宅を適正な価格で提供する"という、地方自治体の出資する公社の思想に対する信頼、すなわち"公社"の名前を信用して購入を決意したと言えるのです。
その後、公社はアシスト1500、買い換え保証制度の導入等、試行錯誤を繰り返した後、平成7年10月に予定を変更して売り出した18期1次(=30棟)と併せて、ようやく112戸を販売しました。後から購入した18期1次入居者も、「今後も同一条件で販売する。」という言葉で説得されました。
 しかしこの段階で、当物件の価格は完全に実勢に合わないものとなり、未販売の31棟を含めると、売れ残り戸数の全戸数に対する割合は実に63%強(194/306戸)となりました。その後は、さしたる販売努力もされないまま、当物件が公庫融資上中古扱いとなる瀬戸際の平成10年12月になって、公社は当物件の値下げ販売を内部決定します。この事実は、放置が意図的であったことをうかがわせます。その際公社は、「公団や他の公社のような一方的な値下げ販売はしない。既購入者に金銭補償を講じる"神奈川方式"で解決したい。」と公言し、私達住民にも解決に向けての具体的提案を求めてきました。

2) 公社側の対応の変化と不誠実な対応
 これを受けて私達住民側は、公社の性格や面目も考慮しながら、値下げ販売時の妥協点を模索してきました。しかし、公社側は平成11年の4月になると、この協議を一方的に打ち切り、「当物件を平均43%値下げして販売する(これは当初の最多価格帯5700万円を3200万円に、つまり2500万円もの値引きになります)。販売は夏前に開始したい。ただし、既住民への遡及措置は一切無し。」という主旨の通告をしてきました。
 公社自らが"神奈川方式"による解決を約束した以上、この通告は、当然私達住民が納得できるものではありません。私達は急遽、臨時住民集会を開催し、状況を説明、さらには公社理事長宛に正式な抗議書を送付し、回答を求めるとともに、この不当な社内決定を直ちに撤回し、協議の継続を再開するように公社に要求しました。
 これに対し公社は、抗議書に満足な回答をしないばかりか、「話し合いはするが、値下げ販売に関する事項は、公社としての決定事項なので変更はしない。」と私達住民に対して、最初で最後の宣言をしました。また、住民側の再三の要求にも係わらず、この説明の場に理事長はおろか、理事すら出席せず、「公社に来れば会う。」という約束も、我々が何度か公社に足を運んだにも係わらず、結局反故にされたままです。最終的には、販売部長すら来なくなりました。さらに驚くべきことに公社は、販売部長が住民集会の場で、「住民の理解が得られるまで県知事への値下げ販売申請は行わない。」と公言しながら(この事実は録音テープとして残っています)、平行して神奈川県知事へ値下げ販売の申請を行ない、全住民への告知以前に既に認可を得ていたのです。この裏切りに対し私達は、県議会へ"値下げ販売認可の取り消し"を訴える陳情も行いましたが、期待した成果は得られませんでした。

3) 抗議活動の開始について
 私達の資産価値暴落の危機が迫る中、このような不誠実な対応を繰り返す公社に対し、私達は平成11年6月19日の住民集会を経て"若葉台4-30・31・32棟不当販売に抗議する住民の会"を正式に結成し、公社の不当値引き販売に対する抗議活動を開始しました。
しかし公社は、私達の声を無視する形で、平成11年7月10日に、30・32棟の売れ残り住戸の値下げ販売を強行しました。しかも販売開始後は、抗議活動を行なう私達既住民に対し、"販売妨害"と発言し、記録を残すと称して、ビデオカメラを向ける、或いは音声を隠しどりするといった暴挙に出ます。
 これらの公社の行動を不安に感じた一部住民の声に応える形で、私達は平成11年8月より、ここに居ります、齋藤則之弁護士をはじめとする弁護団に法律的なアドバイスをいただきながら抗議活動を継続してきました。

 公社の姿勢に批判的な世論もあって、値下げ販売は決して順調とは言えない状態で推移します。しかし、公社はあくまでも強行姿勢を崩さず、30・32棟に売れ残りを抱えたまま、平成11年11月には販売凍結状態にあった31棟の販売も開始します。この間、私達住民に対しては、「値下げ販売は市場原理に基づくものである。」という発言を繰り返し、当然謝罪の発言もありません。

4) 訴訟を決意した過程について
 昨年12月になると、販売は完全に膠着状態となりましたが、公社はそれでも強行姿勢を崩さず、その一方で、抗議活動を継続する私達に対し、「抗議活動を中止しないと新規購入者との間で揉め事になると思うが…」と発言したり、抗議活動を行なう住民を誹謗中傷する手紙を関係者に送りつけたりするなど、常軌を逸していると言わざるを得ないような言動を繰り返すようになります。
 ことここに至り、"抗議する住民の会"の住民の間にも、もはや訴訟によって決着をつけるしかないという気運が高まり始めました。そこで昨年末に、弁護団に正式に訴訟を委任し、本年3月31日、訴状提出の運びとなりました。

5) 終わりに
 私達"若葉台4-30・31・32棟不当販売に抗議する住民の会"には、発売開始当初の値段でこのマンションを購入した112世帯のうち、103世帯が参加しておりますが、今回の訴訟にはそのうちの95世帯、146名が参加しています。これは元値で購入した世帯の、実に85%が訴訟に参加していることを意味し、同時に住民の公社に対する強い怒りを如実に物語っています。私達は今の公社を許すことは絶対に出来ないのです。
 公社の存在意義は、その名の通り良質な住宅を適正な価格で県民に供給し、より良い住環境を維持していくことであると私達は認識していました。しかしながら今回のような住民の理解が全く得られていない状況下で大幅値下げ販売を強行し、さらに何年先になるかわからない完売まで販売を継続し続けることは、さらなる資産価値の低下や人間関係の悪化など住環境の悪化を招くことは明白です。公社の行動は私達の常識からは信じられないことばかりです。にもかかわらず、「道義的責任すら認めない」と開き直る公社の体質に対し、私達は強い憤りを押さえ切れません。

 以上のような理由により、私達原告団は、弁護団とともに被告公社の"債務不履行責任"と"不法行為責任"を追及し、同時に"公社の設立・存在意義"も、問い正す所存です。被告は住宅"供給公社"であって、決して住宅"販売会社"ではないのです。
また私達住民の中には、公社の対応に対し強い憤りを感じているものの、個人的な事情で訴訟に参加できない方がいることも付け加えておきます。

 私達原告団は、双方が納得できるかたちで空き住戸に新しい住民を迎え入れ、私達の住む若葉台4-30・31・32棟が一刻も早く、健全で快適な住環境となることを願って止みません。裁判所におかれましては、是非とも私達の訴えにご理解を賜りますようお願い申し上げて、私達原告団の所信表明とさせて頂きます。
                                                  以上


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