2000/6/14
答弁書


請求の趣旨に対する答弁

一 原告らの請求を棄却する
二 訴訟費用は原告らの負担とする
との判決を求める。

請求の原因に対する答弁

第一 当事者及び積立分譲住宅の譲渡契約

一 原告らの地位
 原告らの全員が若葉台団地の住民であることは否認する。当事者目録中二頁原告「**亘」は「**亙」の、同八頁同「**義友」は「**義知」の誤記と思料する。その余は、原告らの釈明を待って答弁する。

二 被告の地位
1 地方住宅供給公社法第一条の目的中、その用に供する「住宅」とある点は否認する(「宅地」である)。また、「特殊法人」であることも否認する(「特別法人」である(地方公社制度研究会編集「地方公社実務提要」ぎょうせい三七一頁、四五二頁参照))。
 その余は認める。
2 被告が公共的性格を有する法人であることは認める。

三 原告らと被告との間の分譲住宅譲渡契約の締結
 原告****、同****にかかる契約日は否認し、その余は認める。

第二 本件契約の基本原則

一 譲渡価格の決定−原価主義の原則
 原告らの釈明を待って答弁する。

二 譲渡制限規定の存在
 施工規則第七条「1項」とする点は否認する(「第一号」である)。その余は、原告らの釈明を待って答弁する。

第三 譲渡行為における事実経過

一 被告の原告への譲渡行為の経過
1 譲渡行為の時期
 原告****、同****にかかる契約日は否認し、その余は認める。
2 譲渡時期における社会経済事情及び原告らの対応
(1) 社会経済事情
 認める。
(2) 原告らの関心及び対応
 不知。
3 被告の対応と原告らとの本件契約の締結
(1) 被告がその決定した価格で取得することを勧めたことは認め、その余は否認する。
(2) 原告らと被告との間で譲渡契約が締結されたことは認め、その余は不知。

二 新たな価格設定による同一タイプないし類似物件の譲渡
1 大幅な値下譲渡の開始
(1) 大幅であるか否かは不知。その余は認める。
(2) 値下譲渡したこと、経済事情の変化により市場価格との間で落差があること、特別の事情(施行規則第六条第二項)があるとすることは認め、その余は否認する。
2 大幅な値下による譲渡に伴う損失に対する公的資金による補填
(1) 否認する。
(2) 否認する。

第四 被告の責任
 原告らの釈明を待って答弁する。

第五 損害・総合計 金一○億五九二五万円
一 不知。
二 不知。

第六 結語
 争う。

求釈明

一 求釈明の趣旨
 原告らの主張には、「原価主義」「譲渡制限」の用語が多く使用され、その主張を支えているものと推測する。しかし、その内容が不分明であるため原告らの主張を理解することができない。これらの用語の内容を原告らがどのように認識しているのかを明らかにしつつ、裁判所及び当事者が共通の意味合いで正確にこれらの用語を用いることが議論の大前提である。
 また、請求の趣旨第四被告の責任は、原告ら独自の見解に基づく主張であり、現段階では被告は認否することはできない。よって、原告らの主張を明確にする必要がある。

二 求釈明事項
1 原告の地位について(請求の原因第一、一)
 若葉台第一七期(平成六年三月募集)は、「積立分譲住宅」という名称で販売したが、実際の販売契約にあたっては、積立分譲契約をした購入者と一般分譲契約をした購入者がいる。また、同第一八期一次、二次(平成七年一〇月、同年一一月募集)は「一般分譲住宅」という名称で販売し、一般分譲契約がなされた。原告らは、自らをすべて「積立分譲住宅の所有者」と主張するが(請求の原因第一、二)右事実との関係でいかなることになるのか。

2 被告の地位について(請求の原因第一、二)
 「環境共生(請求の原因第一、二2)」とは何か。出典及び内容を明らかにされたい。

3 原価主義について(請求の原因第二、一)
(一) 請求の原因第二、一1「所謂原価主義」とはいかなる内容のものか。
(二) 原告らは、「所謂原価主義」の趣旨を「譲受人に対して良質な住宅を適正な価格で公平平等な取り扱いで譲渡する」とするが(請求の請求の原因第二、一1)、公平平等な取り扱いということの根拠を明らかにされたい。
(三) 同2第一段落「原価主義に基づく価格」、第二段落「原価」「分譲住宅の譲渡価格」はそれぞれどのようなものか。その構成を明らかにされたい。
(四) 原告らは、右(三)の三つの「価」を異なるものと捉えていると思われるが、そうであるとすれば、これらの関係を明らかにされたい。
(五) 原告らは、施行規則第六条第一項が原告らのいう「原価主義」を規定しているとするが(請求の原因第二、一1)、その根拠は何か。
(六) 原告らは、被告が積立分譲住宅の譲渡の対価を決定するにあたり、市場の動向に配慮することを一切認めないのか。そうであれば、その根拠は何か。
(七) 原告らは、施行規則第六条第一項が原告らのいう「原価主義」を規定しているとするが(請求の原因第二、一1)、地方公社に利益が生じる場合があることを認めた地方住宅供給公社法第三三条、特別の事情がある場合には都道府県知事の承認を得て譲渡の対価を別に定めることができるとする施行規則第六条第二項との関係をどのように考えているのか、明らかにされたい。
(八) 「地方住宅供給公社法施行規則」は、講学上の「行政命令」か、「法規命令」か。
(九) 仮に、施行規則第六条第一項が原告らのいう「原価主義」を規定しているとして、原告らは、同条項が本件契約に直接適用されると考えるのか。そうであるとすれば、その理論的根拠は何か。

4 譲渡制限について(請求の原因第二、二)
(一) 施行規則第七条第一号の趣旨について、原告らの理解を、根拠を示しつつ、明確にされたい。
(二) 仮に、施行規則第七条第一号の趣旨が原告らの主張のとおり、「譲渡後においても原価主義に基づく価格を維持する」ものであるとすれば、再譲渡は一切認めないとしなければならないはずであるが、同号はその例外を認めている。そのこととの整合性を説明されたい。
(三) 仮に、施行規則第七条第一号の趣旨が原告らの主張のとおりであるとして、原告らは、同号が本件契約に直接適用されると考えるのか。そうであるとすれば、その理論的根拠は何か。

5 公的資金による補填について(請求の原因第三、二2)
(一) 原告らが被告に生じると主張する損失を、税金で補填するとする(請求の原因第三、二2)根拠は何か。
(二) 仮に、原告らの主張のとおり、被告に生じる損失が公的資金で補填されるとして、それが原告らの請求とどのように関連するのか。

6 債務不履行責任について(請求の原因第四、一)
(一) 契約内容の解釈について、ことさらに「規範的」「合目的的」になされなければならない(請求の原因第四、一1)理由は何か。
(二) 原告らが、被告は情報量、機動力において原告らとの間で格段の格差が認められるとする(請求の原因第四、一1)根拠は何か。
(三) 仮に、被告は情報量、機動力において原告らとの間で格段の格差が認められるとして、それが原告らの主張をどのように根拠づけるのか。
(四) 契約内容の解釈について、原告らが、施行規則第六条第一項、第七条第一号の趣旨を指針とする(請求の原因第四、一2(2))理論的根拠は何か。
(五) 原価主義の遵守・維持義務(請求の原因第四、一2(2))が導き出される理論的根拠を具体的に説明されたい。
(六) 原告らは、原被告双方に原価主義の遵守・維持義務がなければ、同一タイプないし類似の物件の価格差を生じさせることになるとするが(請求の原因第四、一2(3))、被告が価格を遵守すべき期間・地域の範囲を明らかにされたい。
(七) 被告に原価主義の遵守・維持義務が課されているとすれば、市場価格との乖離が出た場合の被告への損失補填が用意されていなければならないが、そのような法律はない。そのこととの整合性を、原告らはどのように考えているのか。
(八) 本件契約は、原告らの自由意志に基づき締結されたものではないのか。

7 不法行為責任について(請求の原因第四、二)
 (一) 著しい価格差の回避義務(請求の原因第四、二1)が導き出される理論的根拠を具体的に説明されたい。
(二) 「著しい」とは具体的にどのようなものを指すのか。
(三) 本件契約時、不動産の価格がさらに下落する危険があると判断できる社会情勢であったのであれば、購入者においても、購入しないあるいは他の物件を購入するなどの危険を回避する行動をとることが可能であったはずであるが、原告らはどのように考えるか。
(四) 著しい価格差の回避義務とは、過失責任か、無過失責任か。
(五) 「譲渡価格において平等に扱われるべき権利(請求の原因第四、二4)」の実定法上の根拠は何か。
(六) 「譲渡価格において平等に扱われるべき権利」における「平等」とはどのようなものか。


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